栄養補助食品の保管における課題:温度管理
エクスカーション(excursion)とは、製品や原料が、適切な保管温度や湿度の管理範囲を外れて保持される期間を指します。

栄養補助食品およびその原料の保管において、温度や湿度の管理上の問題を語る際に用いられるのが、「エクスカーション」という概念です。
エクスカーションは、人為的ミスや、空調設備(暖房・換気・空調)の故障、工程や取り扱い上の予期せぬ不具合など、想定外の要因によって発生するため、予測が困難です。
たとえば、適切に温度管理された環境から製品を出荷し、次の管理環境へ移動する途中で遅延が発生した場合などが該当します。
エクスカーションが発生すると、以下のような製品劣化を招く可能性があります。
- 特に錠剤などの「乾燥系」製品において、分解パターンによる不純物の生成
- 液体、シロップ、化粧品などにおける成分分離といった製品形状の劣化
こうした劣化は、製品の有効性を損なったり、表示内容と一致しなくなったりする原因となります。
さらに、製品が適切な保管条件を維持できていない場合、製品が不正(adulterated)と見なされたり、表示内容との不整合が生じたり、あるいはその両方が発生する可能性があります。その結果、フィールドアラートの発行や、リコールにつながるなど、規制上の影響が生じることもあります。
エクスカーションが発生した際、倉庫では、その発生時刻、継続時間、内容を特定できる仕組みを備えている必要があります。これは、製品への影響を評価するための調査を行う上で不可欠です。
温度マッピング
では、温度・湿度の品質管理において、保管業者やベンダーに対して何を確認すべきでしょうか。まず確認すべきなのが「温度マッピング」です。
ベンダーがどのように保管環境を管理しているかは、ベンダー資格評価やディストリビューター資格評価の一環として確認されるべき事項です。多くの大規模組織では、温度マッピングシステムを導入しており、保管温度の管理だけでなく、エクスカーションの発生を検知・通知・記録することが可能になっています。
適切な保管慣行が整っていない場合や、温度・湿度を管理し、その状況を報告できない場合は、明確なリスクシグナルと捉えるべきです。
エクスカーションが発生した場合、倉庫は品質責任者または品質部門へ速やかに通知し、直ちに調査を開始する必要があります。この調査では、メーカーの製品および調査対象となる倉庫内の全製品への影響が評価されます。
調査結果によっては、製品がすでに出荷されているかどうかに応じて、フィールドアラートの提出が必要になる場合もあります。また、リコールの検討が必要となる可能性もあります。
このため、ベンダーがこうしたプロセスを確実に備えていることを確認し、その確認を技術契約(テクニカルアグリーメント)の一部として明記することが重要です。温度マッピングに関する書面上の記録を提示できるベンダーもいますが、契約締結前および締結後も定期的に、信頼できる第三者による検証を行うことが推奨されます。期待事項について双方の認識をそろえるためにも、これらを技術契約に盛り込むことが重要です。
リスクマネジメント計画
適切なプロセスに加え、ベンダーはリスクマネジメント計画を備え、その内容と運用方法をメーカーに対して説明・共有できる必要があります。
たとえ最先端のシステムを導入していたとしても、想定外の事態を見越した備えが欠かせません。たとえば以下のようなケースを想定する必要があります。
- 長期休暇中に空調設備が停止した場合
- 暖房が機能せず、厳冬期に倉庫内の製品が凍結してしまう場合
- 外気温が極端に上昇し、空調設備の冷却能力が追いつかなくなる場合
リスクマネジメントでは、検証または資格評価プロセスが確立されているかも重要です。
たとえば、「最大〇時間までのエクスカーションであれば、倉庫環境は管理下にあると判断できる。それ以上の場合には、送風機や冷却機の使用、管理温度対応車両への製品移動など、特別な措置を講じる必要がある」といった明確な基準が求められます。
十分に準備された倉庫では、有害事象が発生した際に迅速かつ効果的に対応できる計画が整備されており、それらの事象について透明性をもって顧客に連絡できる体制が構築されています。
GMP 監査の役割
GMP 監査は、保管に関わる多くのリスクを低減するうえで重要な役割を果たします。NSF のような独立機関が実施する明確に定義された監査プロセスでは、監査期間、是正措置要求(CAR)のレビュー期限、継続的なモニタリング要件が定められています。これらは、エクスカーション発生時の対応を体系化し、迅速な行動を可能にします。
ただし、注意すべき点もあります。監査は、不適切な保管慣行に対する「遅行指標(ラギングインディケーター)」であるという点です。監査によって問題が発見された時点では、すでに影響が生じている場合もあります。そのため、ベンダー自身が保管環境を常時監視し、エクスカーションを把握し、監査以前に顧客へ適切に共有できる体制を整えていることが重要です。
NSFがお手伝いできること
事業の成長に向けて、NSFがどのようにお役に立てるかぜひご相談ください。


